Penomecoをどうかよろしく ※5/12加筆

昨年突然の'推し入り'を果たしたラッパーのPenomecoですが、今年4月に自身2度目の単独ライブが開催されまして(もちろん2日間とも行った)、2018年以降関心度があがりっぱなしです。

昨日(5/5)は客演仕事が、明日(5/7)には久しぶりにPenomeco名義の新曲リリースがあるので、少しずつ書き溜めていたこの記事をどうにかリリース前に公開するぞ…という気持ちで仕上げたのですが、書くにあたって「省略せずにできるだけ全部書く」を念頭にしたところ、またしても論文並みの長さになってしまった。熱量のままに記事を書くのは久しぶりだな…。

※新曲リリースされ、Tempoのセルフカバーがあったりしたので、加筆しました(5/12)

 

▼Penomecoってだれ…

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Penomeco(페노메코) /本名 チョンドンウク(정동욱)

1992年10月7日生まれ。今ではS.M.エンタの傘下に入ったMillion Market所属、FANXYCHILDのクルーメンバーのラッパー。中高を若松河田の韓国人学校で過ごし、当時同じクラスにいたhiphopの話ができる友人ZICOとは、今も濃く続く長い付き合い。19の時に家庭の事情により音楽から隔離された生活を余儀なくされたものの、4,5年ほどして活動再開。SMTMやbreakers等の番組出演や海外公演をしつつ、配信や客演でのリリースを重ね、ミニアルバム”Garden”を昨年末にリリース。今年4月に、2018年春以来となる自身2度目の単独ライブを終えたばかり。その単独ライブで先行披露された新曲「영화 한 편 찍자」(映画一本撮ろう)が5月7日にリリースされる。

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最近ならこっちのアー写は見たことある人いそう*1FENDIのこの柄のジャケットめちゃめちゃかわいくてガチで買おうとしてたな…お値段見てやめたけど…

 

本人のバックボーンは楽曲のところでも触れていくので、今はおいといて…ひとまずPenomecoが私の1pickに至るまでの話を。

 

▼なれそめ(?)

2018年のピックアップ曲を紹介する記事でも書いたんだけど、K−POP二年生である2018年は新譜を片っ端から聞いてくスタイルだったので、いつものように新譜を順番に聴いてたんですよね。そのうちこの曲に出会う。

L.I.E

L.I.E

  • PENOMECO
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255

「ZICOがプロデュースしてるんだ、ふーん」みたいな、めちゃくちゃ軽い気持ちで聞いたら(MVは見てない)思いがけずかっこよかった。Penomecoっていうのか、良い曲だな、となり、他の曲をmelonで掘ったところ、この曲がクリーンヒットする。

WTF (Went Too Far)

WTF (Went Too Far)

アルバムのアートワークも手伝ってか、私が水中で感じる、多幸感によるきらめきみたいなのと同じもの*2*3、を感じたんだよな…浅瀬の水の中で仰向けになってコポコポとお日様を眺めてるような…。聞く人を選びそうな癖のある声なのに上手に”楽器”として活かしていて耳触りも良いし、前述の類のきらめきを曲に感じたのは初めてだったので、「Penomeco」はこの感じ、というインプットがされた瞬間でもあった。多分この曲を聴いてなかったら「Penomeco」って名前は覚えていないだろうな…。

その後も同じように新譜を聴き続ける毎日が続くのだけど、気になる曲がある→クレジットや誰の曲かを見る→あれ、ペノメコってPenomeco?ということが起こる。不思議なことにこれが一度だけではなく何度も起こる。繰り返すけど、本当に機械的に曲を聴き続けていたので、意図的にPenomecoだけ追うことはしてなかったんだよね…なのに、彼の楽曲は結果的に琴線に触れてしまう。個人的にも割と忙しくしていた3月〜8月までの間、Penomecoもサバイバル番組への出演(breakers)やリリース客演海外ライブを重ねていたのだけど、意図せずPenomecoのリリースだけは概ね追ったことになっていた。インスタフォローしたのも確か夏くらいで、この時期やたら夜中にインスタライブやってた気がしたんだけど、しんどい時期ってこの辺だったのかなぁ(これについては後で触れる)。

そうこうしてるうちにCOCO BOTTLEがやってくる。

COCO BOTTLE

COCO BOTTLE

これを、SEVENTEENにどぷんと行った時のようにMVをよく見よく聞いた*4。これが多分、音楽的な面で深入りしていく上でのトドメだったんだと思う。

その後リリースは途切れ、私も9月10月はそれなりに忙しくしていたところで「Penomeco日本公演」のアナウンスがTLを駆け巡り*5、4月の単コンを見送っていた身としてはVISIONが初の現場となり、その後ライブ見たさに転がるように3度ほど渡韓し今に至る…と。人となりを知るようになったのはVISION以降なので、それまではひたすら曲を聞くばかりの毎日だったのにね…やっぱりライブ見て、人そのものに関心を持ってしまうとダメね…*6

 

 

▼Penomeco、この声でめちゃめちゃに器用

話の流れでいくつか紹介したけれど、Penomecoが関わる楽曲は、客演曲も自分名義の曲も本当におもしろい。'おもしろい'を構成しているのはいくつかあるのだけど、彼の声質と表現力によるところがそれなりに大きいので、まずはその話を。

hiphopというかラップって「声が低くて太くてドスが効いている」という観念の人、わりといると思うんだけど(かくいう私もそう思っていて、それが苦手で近づかなかったジャンルでもあった)、Penomecoの声は鼻にかかった特徴的な声で、必ずしも声が低くて太くてドスが効いているわけではない。もちろん表現としてそういう曲もあるけれど、ラップしてても歌ってても聞いてすぐに彼の声とわかるんだよな。トラックメイカーやプロデューサーがサウンドロゴに与える役割を、Penomecoの場合は声そのものが担ってる。強いと思う、そういうの。

特徴的な声だとどれを聞いても同じに聞こえてしまいそうなところ、彼はそうならない。そんな声だからこそ曲との相性の良さが限定されかねないのだけど、結果的に彼は客演曲でさえもジャンルを選ばない。特に今年に入ってからは、客演曲における楽曲のバラエティの幅がすごくて、この声質にしてこの器用さはなんだ?!となる。それでいてどの曲でも主演を喰わずにめちゃくちゃ'Penomeco is here!!!!!'ってしてるわけで、そりゃ「何事…」ってなるよ…リリース順にいくつか貼るので順番に聞いて欲しい。

「dress - baby (feat. penomeco,sogumm)」

Baby (feat. PENOMECO & sogumm)

Baby (feat. PENOMECO & sogumm)

一緒に客演参加してるsogummの声、ものすごく濃くて、聞いたことないくらいねっとりしてるのよ。そんなsogummパートが先に来るから、多分ただきれいな声だと喰われるんだよな…。でもPenomecoはこの声だからか、全然喰われずにめちゃめちゃ共存しててすごい。これ単コンで生で聞けたんだけど、動画撮ってる場合ではない…となり、私のiPhoneに唯一記録が残っていないという…ホント凄かった。友人が教えてくれたのだけど、Penomecoはあるインタビューで彼女の声を「干ばつの中に咲いた薔薇」という表現をしていて、強く膝を叩くのだった。

「punchnello - Blue Hawaii (Feat. Crush, PENOMECO)」

Blue Hawaii (feat. Crush & PENOMECO)

Blue Hawaii (feat. Crush & PENOMECO)

この組み合わせでのリリースはEndorphinぶりでは?!しかも音色の世界観が地続き!と高まっていたら単コンではPunchnelloも出てきて2曲続けてやってくれて、「だよね!!!」ってした。この曲、三者三様の存在感があってとてもおもしろい。Punchnelloのパートは地に足がついていて、そこにCrushのパートが重力を、Penomecoのパートではピンと張った布の上で粒子が跳ねるような、軽やかさが足されていて耳が忙しい。WTFを聞いて感じる色に近いんだけど、客演だから自分名義の曲とは別物ってのも面白いよなぁ。気の知れた仲間との曲ということもあって、ホーム感があり肩の力もストンとしていて良いなー。

「JEONG SEWOON - Feeling (Feat. PENOMECO)」

Feeling (feat. PENOMECO)

Feeling (feat. PENOMECO)

  • チョン・セウン
  • K-Pop
  • ¥255

セウン氏への客演、カットインの仕方と言葉の乗せ方がめちゃめちゃ好きで、「恋が始まってしまう!!!!」って言いながらずっと聞いてた。リリースした時期もものすごく良くて、今年の春はこれ無しでは過ごせなかった。セウン氏、元々客演を迎える曲がほぼない(自分で作るし)中、ラッパーの客演はJUST UでのSik-k以来2人目?で、なんならその時よりもポップで春めいてる曲にバチッッッとはまるPenomecoの声よ…。トラックで刻んでるギターに小気味好いラップで絡んでいくところとかさ、ホント好きでさ、ラップが歌ってるんだよな、これ…。所謂アイドル(と言っていいのか)に歌詞や曲提供としての参加ではなく客演として参加してこのアウトプットをするところ、「ハァーーー」と感心してしまう。

「Mia - Dear (Feat. PENOMECO)」

Dear (feat. PENOMECO)

Dear (feat. PENOMECO)

  • Mia
  • R&B/ソウル
  • ¥255

そんなセウン氏との曲からのこれだよ!!!ずるい!!!(´;ω;`)この曲、ラップではなく歌がさーーーーアーーーーってなるんだよね…。Penomecoの歌やラップは、トラックによって重力の程度も種類も違っていて、この曲とbabyも重さは似てても種類が全然違う。babyの方は懇願とか渇望、Dearは孤独とか寂寞、みたいな印象になるんだよな。それは彼の歌以外から受け取るものによるところも勿論あるんだけど、韓国語がわからず歌詞の意味を直接的に受け取れない私が、聞いただけでイメージを言語化できるということそのものが、彼の器用さの証拠なのかと。受け取ったイメージと歌詞との答え合わせをしてもズレたことがそんなになくて、割とびっくりするもの。

余談だけど、MiaはPenomecoも出演していたbreakersで共演していたシンガー(当時は現役音大生だった)で、優勝こそしなかったけどこの出演がきっかけでデビューを果たしてる。この曲はその番組でも披露していたんだけど、客演相手がEddy Kimだったんだよね。もちろんそのパートのメロディーも歌詞も声も違っていて、それぞれの特徴と良さがあるので、聞き比べてもおもしろいと思う!

「millic - PARADISE (Feat. FANXYCHILD)」

客演と言えるのかわからないしこれは2017年のリリースなんだけど、FANXYCHILDクルーメンバー全員でやったこの曲のことは書かないとダメなやつ…

Paradise (feat. FANXYCHILD)

Paradise (feat. FANXYCHILD)

millicのVidaってアルバムに収録されている曲なんだけど、ZICO・DEAN・Crushが次々に登場した後のPenomecoのパートがすごい。それまでは割と精神世界というか、無機質に夢現を彷徨っていたところを、彼のパートが始まった途端、視界一面を埋め尽くすように百合の花がブワァーーーーーーっと咲き始めて、むせ返るような花の香りが襲ってくるんだよ…で、百合で埋め尽くされたと思ったらみるみるうちに見た事のない色に変色していくイメージなんだよな……えっこれこの書き方で伝わる?ww トラックの雰囲気がクッと変わるパートでもあるんだけど、たぶんここ、人によっては捕まるどころかガッチリ捕食されると思うんだよなぁ…友人もこれで落ちたところある、と言っていてわかる、となった。

「ELO - Oh I (Feat. PENOMECO)」

強く叩きつけるような、という意味ではこの客演もだな…これは2018年のリリース。

Oh I (feat. PENOMECO)

Oh I (feat. PENOMECO)

  • ELO
  • R&B/ソウル
  • ¥255

これまでにあげた客演曲の中でも硬派なトラックで、叫ぶようなELO氏の歌に対して芯のある真っ直ぐなラップで応えるPenomeco、力強くてアツい。念願叶って単コンで見ることができて嬉しかったなぁ。

客演曲はこれ以外にもたくさんあるので、曲一覧から主名義がPenomeco以外のものを探して聞いてほしいなぁ。自分以外の個性の中でどう自分を出すか、の落とし所の違いがわかるので、客演曲の聴き比べは楽しい。

 

客演のことばかりあげてきたので、Penomeco自身の曲のことも書くぞ…端折っている曲もあるのでそこはご容赦を。

 

▼とにかく自分に向き合うPenomeco

客演曲では器用さを書いたけど、自名義の曲はとにかく自分に向き合う印象が強いPenomeco。順番に追うことにします。

①2016年までのPenomeco

今のMillion Market所属になる前の配信(STONESHIPともう一つのレーベルから)が3つと、そのMillion Marketから1つ。前3曲は日本からだとApple MusicやiTunesで聞けなかったりそもそも配信されてなかったりするのでファンカム動画貼っておきますね。活動再開したばかりの頃の曲だからなのか、歌詞が強くてヒリヒリする。Right Thereのファンカムの若さがすごい、別人のようだな。

 「Right There」(2014.10)

「23」(2014.12)

「Ma Fam」(2016.3)

Ma Famまでの分はMelonのジャンル表記がIndieMusicになってて、7:3くらいで男性リスナーが多かった(Melonのデータ参照)。で、ミリマ所属になったここからはそのジャンル表記が外れ、女性リスナーが増えて、男女比率が6:4くらいになってくる。

「For you」

MVがないのでスタジオパフォーマンス動画を。先にも書いた、Penomeco×Crush×Punchnelloの組み合わせでの初リリースに当たるのかな…軽快とは逆の、呼吸がうまくできない詰まったビートで、しかもその後の”No.5”にも通じそうな「香り」が歌詞に出てくるの、今見ると伏線のように思えて面白いなーっとなる。ここからはApple Musicでも聞けるよ!ミリマありがとう!

For You

For You

ちなみにこの年はZICOの"말해 Yes or No"に客演した年にあたる(23とMa Famの間、2015.10)。友人に教えてもらったのだけど、2016年のサマソニにZICOが出演した時にPenomecoも一緒にステージに出たそうで(FANCAMがあるので探して)、その後もライブのゲストできたりフェスで一緒になったりすると2人で演る事が多くて君たちは本当に…!ってなるな。音楽活動を再開するにあたってZICOに相談したところ「お前がそういうのをずっと待ってた」と言われ、5分で不安がふっとんだという話はズッ友エピソードとして語り継いでいきたい。

 

②2017年のPenomeco

2017年はSMTM6に出ていた年でもあるんだよな…起きていたことは要約でしか知らないのでここでは触れないけれど、何れにしても露出がぐっと増えた年には違いないかと。

「Film」

Film - Single

Film - Single

これどういう位置付けになるんだろう…生産数限定でパッケージになっている作品でもあるんだけど、Gardenのように流通しているわけではなさそうで…シングルになるのかな…。形態はともかく、ライブでも頻繁に披露される、歌詞を覚えて絶対にシンガロングしたい”PNM(Plus And Minus)”と、とりわけピックアップして書きたい”WTF(Went Too Far)”を含む3曲が収録されてます。

WTFについては先にも書いた通り、私にとってもこれがなければPenomecoを覚えていないだろうっていう位置付けの曲なんだけど、Penomecoにとってもとても大事な曲のようで。2018年に放送された「breakers」という番組では「ファイナル用に準備しているステージが一番見てほしい曲」と言っていたんだよな。文字通りファイナルステージでこの曲が披露され彼は優勝するのだけど、皮肉にもその後スランプに突入していくという。

実はこの時のステージアレンジと全く同じ曲が、今年4月の単独ライブの最後を飾る曲として使われていたのだけど、ライブを見た当時はシンプルにピアノ一本で始まるアレンジすごく良い、で終わっていたんですよね…breakersまだ見てなかったので。なので、単独ライブ後にあのアレンジがこの時のアレンジであると知って「アーーーーーーーーーTTTT」となった。スランプを乗り越え苦労してミニアルバムを完成させた1年間を総括するような2度目の単独ライブのあの位置に、何ならスラップのきっかけになった番組のファイナルで使った曲を、当時のアレンジのまま持ってきたことの意味や理由を推し量ってしまい、すごくこみ上げるものがあったんだよな。そんなWTF、breakersでの曲紹介の字幕には「20代で最も幸せだった時の感情を込めた曲」と。もうね、泣いちゃうこんなの。彼にとって大事な曲であることを知るには十分すぎる体験だったなぁ。

ちなみにこの記事の前半にも書いたんだけど*7、私がこの曲を初めて聞いた時に感じたのも「多幸感」なんですよね…目に見えない感情を確かに曲に乗せられる感性、そういうところだぞPenomeco、私が好きなのは。そんな曲のリリースが2017年にあったよということで、動画はその2018年放送のbreakersバージョンのWTFを。iTunesのリンクも懲りずにもう一度貼ります。

WTF (Went Too Far)

WTF (Went Too Far)

 

「HUNNIT」

HUNNIT

HUNNIT

SM Stationからの配信曲。この後にリリースされる”L.I.E”でも話される別れた彼女の事が歌詞に濃く出ているのだけど、めちゃくちゃ怒ってるんですよね…(それだけ好きだったんだな、というね)。友人が「Penomeco、あの感じ(オフステージだと穏やかでふわふわしてる印象)で激情の人というのがすごい」という話をしていて、本人の人間的な部分が曲に表れる圧倒的リアルさは、アイドル界隈では体感できないところなのだと思うなー。ちなみに、同じ年の2月にSoundCloud"No love"という曲が公開されているのですが、HUNNITは8月なので、おそらく前身の曲なのかと(曲自体は全く別物ではある)。HUNNITが「消えろよ俺の携帯から」に対してこちらは「俺の中に君はいない」なのも味わいが深い。

 

③2018年のPenomeco

この年のPenomeco、「breakers*8」をこなしながら海外公演したりしていた年で、めちゃくちゃ忙しかったりスランプになったりもしている。それを経て、年の瀬に激烈素晴らしいGardenっていうミニアルバムを出しているので、一皮むけた年になったのかと。SMTM6で十分に披露できなかったステージへの渇きは満たされたけど、競争は性に合わないというように、自分と徹底的に向き合うタイプなんだろうな…それを踏まえての2018年ということで、順番に。

「L.I.E(Prod.ZICO)」

ZICOをプロデュースに迎えた配信リリース。なれそめの所で既出なのでdingoのLIVE映像を貼っておく。HUNNITと同じく、別れた彼女の事が歌詞になっているんだけど、HUNNITと比べてほしいんですよね…割とストレートに感情を書いていたHUNNITから表現が変わる。もしかしたらプロデュースによるものかもしれないけれど、電話している片方側だけの話声と、電話を置いた後のため息が聞こえてきそうで、曲の雰囲気も相まって虚無な空気がすごい。いや実際虚無な空気だったんだろうなと思うんだよね…そしてその空気をきちんとパッケージにできるところね、そういうところだよPenomeco、私が好きなのは(二度目)。

「Good Morning(Feat. CAR,THE GARDEN)」

Good Morning (feat. CAR, THE GARDEN)

Good Morning (feat. CAR, THE GARDEN)

チルな雰囲気に加え、曲名である”Good Morning”から受ける初見の印象から心地の良い曲なんだろうと想像するのだけど、歌詞はそうでもない。これ、先に書いた”音楽ができなかった時”のPenomeco自身の話を自伝的に書いているもので、当時の事を消化する時の表現としてこの形とこの音色を選ぶことや、MVがオール日本ロケであることもなんだか意味を推し量ってしまう。その当時「しんどいな…」という気持ちの塊を自分自身の真横にそっと積み上げては自分で崩す作業をしていたのでは、と想像してしまうので(実際どうかは定かではない)、この曲を作る時、どう感情を消化していたんだろうな、とずっと気になっている。一部の歌詞置いておくので読んだ上で聞いてみてほしいなー。印象が随分変わると思う。

軍浦駅の前のファミマの店長さん

数か月分の滞った月給払ってくれ

考試院の部屋の滞った家賃が

俺の一日の原動力になった時

一日中口ばっかり動かしてる

元気にやってるだなんて真っ赤な嘘

Common problems and I knew that

別に珍しいことでもないってのは分かってた

弱々しかった足取り

Now I see

表現するのが苦手だった子供

ゆっくりと学んでいく間

I say that "good morning" yeah

 

この曲がリリースされたのと同じ年に「breakers」でアンサーソングを作ってステージで披露する、というミッションがあったのですが。Penomecoは元曲にこのGood Morningを選び、あの時の自分に対しての今の自分からのメッセージとして"Do Ma Thang"という曲を作ります。諸々を踏まえた上で聞くと結構くるものがあるので、セットで聞いてほしいんですよね…「音楽で食っていきたいなんて言える空気じゃなかったけどでも」という気持ちに対してのこれ、という意味で、曲調はもちろん歌詞も同じく結構くるものがある。「なあジホ、お前が言ったように苦労すんのはもう終わりだ」という名言もこの曲の中にあるので、和訳も置いておきますね。音色の選び方も、強目の花の香りがファーーっと吹き荒れるような華やかさがあるので、ParadiseのPenomecoパートが好きな人はたぶん好きだと思う。

「COCO BOTTLE」

こちらも既出なので、breakersのステージ動画を。この曲は2018年のPickupの記事で書いたこれに集約されるんだよな。APROさんによるトラックのセンスは言わずもがな、コーラヲタクにしか書けない歌詞も良いです。

COCO BOTTLE、キャッチーさは言わずもがなで、何が面白いかってトラックの音色と歌詞の乗せ方。コーラの栓を開け、グラスに氷をカランと入れ、注いでシュワーってなって、一口飲んで「ッアー!」ってするまでの音がイントロの後もずーっとあちこちにいて、注ぐ時のトゥクトゥクする音はそのまま歌詞にいる、みたいな。めちゃめちゃコーラ飲みたくなる。コーラのCMに使ってなかったなら今すぐにタイアップしてほしい。

これも「breakers」のミッションから生まれた曲であると、番組を見るまでは知らなかったんだけど、ドライブミュージックを作って!のミッションだと知って「?!」となった。Penomeco大のコーラ好きで、作業中も寝れない時もドライブの時もいつもコーラと一緒なので、ということのよう。マネージャーに「なんでそんなにコーラ好きなのよ?」と聞かれ、出会いからコーラの起源までペラペラ喋るところすごい好感度高かったので、yoonさんによる英語字幕動画置いておきます。

「Garden」

Garden - EP

Garden - EP

  • PENOMECO
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥917

breakers後スランプに苛まれながらも仕上げた初のミニアルバム。このアルバムにまつわるインタビューがたくさん出ていて、友人が教えてくれたものを読み漁った。本当はSMTM6の後に発表しようと思っていたけれど、そのbreakersへの出演があったり色々あってこのタイミングになったこと、タイトル曲の"No.5"はそのSMTM6の後からずっと温めていて、完成までにかなり時間をかけたことなどが話されていて興味深かった。

そのNo.5に限らず収録曲として並ぶものはどれも独立した雰囲気を持っていて、同じ映像が浮かぶ曲は二つとないのが面白い*9。加えて、聴覚以外の感覚を刺激するような見せ方をしようと、このアルバムの収録曲には全て花があてがわれ、それをベースに調香して香水まで作ってしまったのもまた面白いポイントかと。私がこの記事で何度か書いている”目に見えない感情や空気を確かに乗せてくる”ものが”曲”以外になってきたな…でもPenomecoという人が取りうる表現方法としてめちゃめちゃ筋が通っているな…となった。店内全部が花であふれているカフェで、リリースイベントとして”Garden”の展示も開催され、結果的に聴覚・嗅覚・視覚・触覚に訴える作品になったのもまさにそれ、という感じ。(↓動画はその、展示イベントのレポート)

これまでもそうだけど、Penomecoのすごいところは、彼が表現したいものがまっすぐ受取手に届くところだと思うんだよな…その、まっすぐ届くような表現を選択するのがうまいというか。歌詞だけでどうにかするのではなく、歌唱力だけで全てを引っ張るということでもなく、感情の揺れをそのまま形にする最適な方法を認知できるの、表現者として強いなって思う。

それを裏付けるように、このミニアルバムでは感情が極端に振れたときのそれを整えてパッケージしたと言っていて、本当に本当に合点が行く(Okayのようなネガに振れていた時に作った曲もあるので、確かにとなる)。制作中不眠症になったりもしたようなんだけど(一時期なにを語るでもない深夜のインスタライブをよくやってたのはもしかしてこの頃では…となる)、その起伏ごと客観的にパッケージにしてしまえる冷静さみたいなのが垣間見えるんだよな。聞き手からするとそこも面白かったりする。HUNNITの時のあなた、あんなに感情をあらわにしていたじゃない?っていうね。表現が熟していく過程が堪らないなーとなる。

彼は自尊心がそんなに高くない自負があって、数字的な部分よりも価値的な部分で自尊心が上がって欲しい、という思いがある様子なのだけど。このミニアルバムを完成させる過程でそれもだいぶ上がったと言っていてそこも興味深かった。自分自身と向き合う時の肝は自尊心というか、どれだけ自己肯定できるか、みたいな所なんじゃないかと私は思っていて、ちょっとホッとしたというか。いやこれ本当に良いアルバムだと思うし、良いアルバムです!と本人に伝わるようにしていきたいよね。うん*10動画はNo.5のMVを。Crushも一緒に香りについての勉強をしたと言っていたな。良いMVだなー。

No.5 (feat. Crush)

No.5 (feat. Crush)

  • PENOMECO
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255

↓友人に教えてもらったインタビューで面白かったものをまとめておくので、興味があれば翻訳して読んでみてね。

 

④2019年のPenomeco

今年はまだPenomeco名義の曲のリリースがなく客演仕事が多かったのですが*11、5月7日に新曲のリリースが決まっています。先行して4月の単独ライブで披露されているのですが、過去イチかってくらいスローテンポで音数も少ないです。ティザーが出てるので最新の貼っておくね。

「영화 한 편 찍자(Movie)」(映画一本撮ろう)

ライブで見たあれが完成形なんだとしたら、ラップが完封されている曲になる…いや、入れてくると思うんだけど…。これまでの曲の歌詞でも度々登場する「映画」っていう単語がストレートに作品名に来たのはWTFが収録されている"Film"以来では。その名の通りティザーが既にショートムービーになっていて、舞台が日本の高校なんですよね。個人的には、PenomecoがMVで日本を出す時って何かしらのノスタルジーがキーワードになっている時という気がしてならないんだよな…それこそ日本で過ごしていた頃の何かを彷彿とさせるような何かがあるんじゃないかと想像してしまう。4人の登場人物は誰のことを指してるんだろう、とかね。もちろんどうかわからないけれど。ひとまず明日のリリース待ち。

→リリースされたので加筆。長くなったので記事分けました(5/12)

それともう一つ、ELO氏と一緒にまた曲を作っているようで、これもライブで先行披露されていたな。こっちは客演になるんだと思うんだけど、映画一本撮ろうに近いスローテンポのR&B(になるのかな…)で、Oh Iとは全然違う仕上がりになっていてめちゃくちゃ良かった。Penomeco今年はラップより歌の年なのかなーってなる*12

 

客演、自名義、ときてあと一つ…あわせて知っておいてほしいPenomecoの仕事があるので簡単に。

 

▼クレジットに登場するPenomeco

自分がパフォーマンスしたりはしないけど、クレジットに名前が残る仕事も増えてきているPenomeco(私はぺの仕事と呼んでいる)。「そこにも提供してんの?!」となるものがあってびっくりしたり、親交のある人が見えてきたりもするし、事務所のこともあるのか最近はSMドルへの提供が増えているのも面白いので、遡る形でいくつか紹介します。

「EXO - Tempo」(2018.11)

「Red Velvet - Taste」(2018.11)

Taste

Taste

どっちも作詞、ラップメイキングに参加。レドベルの方はあいりんお姉たまが「かわいいラップを書いてくれた」とVLIVEでもコメントくれるなど。Tasteの歌詞和訳こんな感じ、画像3枚目がラップパートにあたるのかと。

https://twitter.com/sunko95/status/1068542692412420102?s=21

この和訳を読んで、Penomeco、もしかして設定を自分にインストールしてから制作するタイプなのでは…?となっているのですが真相やいかに。*13後日それぞれのグループからお礼のメッセージが届くなどして嬉しそうだったなー。(yoonさんによるPenomecoのインスタスクショお借りします)

→5/12加筆

日出演したスケッチブックでTempoのセルフカバーが…!自分で歌ったの初めてだそうで、いやラップパートのスイッチの入れ方よ…!となったので貼っておきますね…。ステージでパフォーマンスしながらラップするとして、とかそういうところも考えて歌詞書いたようで、インストール型〜!ってなった。

 

「CHANYEOL,SEHUN - We Young」(2018.9)

作詞!筆頭で名前が出てるということはそういうことかなーと思うので歌詞和訳貼っておきます。すべての若者たちに自分が望むものを見つけてほしい、って内容になっていて、Penomeco自身のことを重ねてウッ(´;ω;`)となるなど。

「Dindin - Alone」(2018.4)

Alone

Alone

Dindin、N-Soulと連名で作曲。N-SoulとはMa Fam、For youとデビュー間もない頃にも一緒に作業してるので親交が続いている、ということになるのかなー。

「SLEEPY - iD (Prod. GRAY) 」(2018.3)

ID

ID

GRAY、SLEEPYと連名で作曲。昨日のリリースでBIGONEに客演していてそのプロデュースもGRAYだったのだけど、ここで既にGRAYと一緒に仕事してた。iD大好きでリリース当時騒いでいたので、ぺの仕事…!とびっくりしているよね…

 「Block B - My zone」(2017.11)

作詞がZICOと連名だ…気付かなかった…!パート毎に書き手を分けたのか、相談しながら一緒に仕上げたのかどっちだろう…。Block Bの曲のクレジットにPenomecoがいるのはこれだけだったなー。

「Got7 - Boom x3」 (2016.9)

ガッセに提供してたんだ?!とびっくりしたよね…ジェク、BOYTOYと連名で作詞のみなのでラップメイキングの一部ってことになるんだろうか。どういう経路でこの話が来たんだろうな。

 

客演曲、自名義、クレジット、と追ってきまして、最後にこれを。

▼Penomecoの音楽的な背景や関心を追うなら

いつもPenomecoにまつわるあらゆるものを英訳をしてくれるyoonさんが、PenomecoのインスタライブやストーリーでキャッチしたBGMをまとめてくれているのです。彼の音楽的な背景や最近の関心の向き先はここを辿ると良いかもしれない。これ、めちゃくちゃ重要なリソースだと思うんだよな…Penomecoへの関心が高まったのならこれもあわせて辿ると理解が一歩二歩深まるかと。

 

 

 …いやーー、書いたなーーー。

 

Penomecoという人は、感情そのものを、五感に訴える最適な表現を駆使して、再現性高く伝えることのできる繊細な感性の人だと私は思っている……ってことは十分すぎる位書けたと思うのですが。そういう感性のPenomecoが作る曲は、K-POPを入り口に韓国の音楽を聴いている人がK-HiphopR&Bと言われるジャンルに間口を広げていくきっかけになれると思うんだよな。hiphopは表現の芯にある人だけれどそればかりアウトプットするタイプでもないですし。私の場合は別の曲がきっかけだったけど*14、「そういう曲に触れてこなかったしHiphopってなんか怖そう」って思っている人こそPenomecoを聞いてほしい。誰かの感性によって自分の世界が広がるのはとても楽しいので、一人でもこれをきっかけに聞いてくれる人がいて、その人にとって何か一つでも「良いなこれ」と思える曲があると嬉しいなぁと思います。

Penomeco、92年生まれなので遠くない未来に兵役に行ってしまうんですよね…今年はフェスへの出演がいくつか決定しているので、チャンスがあれば渡韓して、ぜひパフォーマンスもみてほしいなーっと。

 

18,000字近い文章を最後まで読んでくれたあなた、本当にありがとう…!Penomecoをどうかよろしくね…!

 

*1:Gardenのアー写。良い写真。

*2:独特すぎて伝わらない…

*3:そしてここでも例によってMVを見ていない

*4:何度か呟いたりもしているけど、私にとっては動画を見るという行為のハードルが高いので、MVをよく見よく聞くのは珍しい

*5:謎のSNSインフルエンサーイベントと、VISIONでのゲスト出演

*6:私がファンを名乗り出すのは作品の関心を経た後に人そのものに関心を持ってからなので、この時点で「私はぺのめこファンだ」とようやく自覚する。おそい。

*7:なれそめについての部分

*8:この番組、Penomecoという人を一つ深く理解する上で必修科目だと思うので、MnetSmartに加入している人は日本語字幕で全部見ましょう。そうじゃなければ英語字幕を付けてくれている素晴らしい方がいらっしゃるのでそれを見るのだ。

*9:意外とあるんだよ、似てるなと思う曲や、映像が浮かばない曲が並ぶこと。

*10:なので今それを伝える手紙を書いている

*11:記事前半で概ね触れてるので見てね

*12:でも客演でめちゃめちゃラップしてる

*13:関ジャニ安田さんが往年の推しなのですが、彼も曲を作る時に設定をインストールして作業するタイプなので、まさか同じなのでは…とブルブルしてる

*14:セウン氏のJUST U